認知症を防ぐために、運動を習慣にする、脳トレに励む――そんな対策をしている人は少なくありません。しかし、意外と見落とされているのが「歯」と認知症の関係です。元オックスフォード大の医学研究者で、「糖と脳」の専門家として知られる医師・下村健寿氏によれば、「歯の本数」によって認知症の発症リスクが大きく変わるといいます。
◇「歯の本数」が認知症リスクを左右する
認知症というと、加齢や遺伝が原因だと思われがちですが、下村氏は認知症の発症リスクを左右する「意外な要素」として「歯」を指摘しています。近年の研究から、歯の状態によってアルツハイマー病をはじめとする認知症の発症リスクがかなり異なることがわかってきました。
研究によると、65歳以上で歯が20本以上残っている人は、歯がほとんどない人に比べて、認知症発症のリスクがなんと半分でした。つまり、年を取っても歯がたくさん残っていると認知症になりにくいということです。
◇なぜ「歯」が脳に影響するのか
では、なぜ歯の本数が認知症リスクと関係するのでしょうか。歯は単に食べ物を噛むためだけのものではありません。
最も有力な説と考えられているのが、歯の奥にある神経の存在です。歯の一本一本の奥には神経が通っており、その神経は脳の中までつながっています。この神経は非常に鋭敏で、上の歯と下の歯の間に髪の毛が一本挟まっただけでも感知できるほどです。
歯は単にものを噛むだけでなく、外界に対する強力な「センサー」でもあるわけです。食事や歯磨きなどで歯に何かが触れるたびに、そのセンサーから脳へと鋭敏な信号が送られます。これだけの繊細な信号を受け続けている脳は、常に刺激にさらされ、活発に活動していることになります。
つまり「歯がある」というだけで、脳は日常的に刺激を受け続けているのです。
◇「歯が抜けた状態」を放置してはいけない
問題は、歯を失ったときです。下村氏は、歯がなくなった状態を「人が住んでいない家」にたとえています。歯がなくなると、この刺激が脳に伝わらなくなります。刺激が来なくなるため、脳の反応も減り、途端に脳の機能が低下したり、脳が萎縮してしまったりするのです。
使われない家が少しずつ傷んでいくように、刺激を受けなくなった脳も機能が低下してしまう可能性があります。
しかし、すでに歯を失っている人も、諦める必要はありません。下村氏によれば、義歯(入れ歯)を利用することで、認知症の発症リスクは40%近く低下することがわかっています。
◇まとめ
歯を大切にすること、歯が抜けた状態をそのまま放置しないことが、「脳の健康」を守ることにもつながります。日頃から歯科検診を受け、口腔ケアを徹底することで、認知症予防につなげていきましょう。歯は単なる消化器官の一部ではなく、脳を活性化する重要な役割を担っているのです。中高年世代にとって、歯を大切にすることは、将来の認知症リスクを大きく変える可能性があります。
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