だから客単価1000円でもしっかり儲かる…「焼肉きんぐ」「丸源ラーメン」の会社が始動「もっちりうどん店」の巧みな設計

うどん「4玉まで同一価格」「1000円でお腹いっぱい」の背景にある戦略とは (写真:筆者撮影)

 うどんは4玉まで同一価格。それでいて、客単価は1000円。  「焼肉きんぐ」などを運営する物語コーポレーションが、2026年5月に開業した新業態「肉讃岐 もっちりうどん源次郎」(以下、源次郎)は、一見採算をとるのが難しそうな価格を設定している。 【画像多数】1000円でお腹いっぱいに、フルサービスも快適すぎる…開業から1カ月以上行列が続く「もっちりうどん源次郎」  しかも、源次郎はセルフ式のうどんチェーンではない。スタッフが注文を取り、出来上がりを席に運ぶフルサービスの店でありながら、想定客単価をセルフ式と同程度の1000円に抑えているのだ。

 物価高が続く中、あえて「4玉まで同一価格」を打ち出した理由や、客単価を1000円に設定した狙いとは。外食業界で40年以上にわたり、業態開発や商品開発に携わってきた同社の執行役員 業態開発・マーケティング担当の廣瀬雅孝さんに話を伺った。 ■フルサービスのうどん市場に参入余地あり  「焼肉きんぐ」や「丸源ラーメン」など、多様な外食ブランドを展開する物語コーポレーションがうどん市場に乗り出した。  うどん市場というと、筆者はすでに複数のチェーン店がひしめいているイメージを思い浮かべた。新たな企業が入り込む余地など残されていないのでは? と思ったが、同社の見解は違った。

 ニュースリリースによると、うどん市場は約2000億円規模のセルフサービス業態と、約5900億円規模のフルサービス業態で構成されている。そのうちセルフ市場は、全国展開する上位2ブランドがシェアの約9割を占めていると廣瀬さんは語る。  かたや、フルサービス市場の規模はセルフ市場の約3倍だが、上位ブランドのシェアはわずか1割強にとどまっているという。圧倒的なシェアを持つブランドが存在しないフルサービス市場に、参入のチャンスがあると判断した。

 だが、参入余地を見出したとしても、そこで勝ち残れるかは別だ。他とは違う明確な強みを打ち出さなければ、数あるうどん店に埋もれてしまう。そこで、廣瀬さんはこう考えた。  「セルフ式のうどんチェーンに対して、お客様が感じている不満や物足りなさを徹底的に解消できるような店にしよう。それこそが差別化になると考えました」  セルフ式に対する不満は、大きく2つあると分析した。まず一つは「安さが売りのはずなのに、お腹いっぱい食べることが難しくなっている」ことだ。

 今や、うどんに天ぷらなどのサイドメニューを追加すれば、会計があっという間に1000円を超えてしまうのは珍しくない。大盛りにしたり、さらに一品加えたりすれば1500円近くになることもある。  うどんチェーンで1000円以上払うのは難しいと、注文の品数や量を抑えている客も多いのではないか。廣瀬さんは、そこに「本当はもっと食べたいのに、価格を気にして我慢せざるを得ない」という不満があると見た。  もう一つは、「セルフであること自体が、不満の原因になっている」ことだ。

 例えば、子連れ客がベビーカーを押しながら大きなお盆でうどんを運ぶのは容易ではない。注文から会計までの流れを複雑に感じ、足が遠のいてしまう年配客もいる。  「気軽に利用できるイメージのセルフ式ですが、その仕組みがかえって負担になっているケースも少なくないんです」 ■セルフ式チェーンの不満を徹底的に解消  源次郎は、セルフ式のうどんチェーンに対する不満を徹底的に解消することを目指して立ち上げられた。  最大の特徴は、うどんを「4玉まで同一価格」で提供していることだ。

 看板商品「霧島黒豚の肉讃岐うどん」(税込869円)をはじめ、どのうどんメニューも1玉から4玉まで自由に選べて、追加料金は一切かからない。  特注の圧力釜を使うことで、麺は茹で上がりから30分は品質が大きく変わらない仕様に。玉数を多く注文しても、もっちりとした食感が損なわれないよう工夫されている。  天ぷらも、注文を受けてからの揚げたてにこだわった。揚げたてをスムーズに提供するオペレーションには、祖業である和食店「しゃぶとかに 源氏総本店」で培った知見が活かされている。

 そしてフルサービスのため、席への案内から注文、料理の提供はすべてスタッフが行う。  各席には呼び出しボタンがあり、注文方法に迷うことはまずない。さらに、テーブルには鰹節・揚げ玉・調味料・お冷のピッチャーも完備。席を離れることなく落ち着いて食事ができるよう配慮されている。 ■「4玉」が最適解だった理由  源次郎が掲げた「4玉まで同一価格」。この物価高の中、思わず「え、本当にいいの?」と聞き返してしまうほどのインパクトがある。

 そもそも、お腹いっぱい食べてもらうことが目的なら「大盛り無料」と打ち出す方法もあったはずだ。なぜ、あえて「4玉」にこだわったのか。  率直に尋ねてみると、廣瀬さんは笑いながら逆にこちらに問いかけてきた。  「大盛り無料と4玉同一価格、どちらが印象に残ると思いますか?」  そう聞かれて筆者は思わず「4玉です!」と即答してしまった。確かに大盛り無料は珍しくないが、4玉と聞けば「気になる」と反応してしまう。廣瀬さんは、その引っ掛かりこそが大事だと言う。

 「うどんのように日常的なマーケットでお客様に興味を持っていただくには、『こんなお店がほしかった』『今までにないよね』と思ってもらえることが大切なんです」  何玉まで同一価格にするかは、検討を重ねた。当初候補に挙がったのは3玉。しかし、3玉は「得得」など、すでに他のチェーン店でも打ち出されていた。一方4玉までを掲げる店はなく、強い訴求になると考えた。  ちなみに、5玉にする案もあったそうだ。だが、5玉にすると「2玉を選んだ人が損をしたように感じてしまうのではないか」という懸念があった。また、お得感から4玉、5玉と注文する客が大半になると採算が合わなくなる恐れもあり、上限を4玉に決めたという。

 この絶妙な判断を支えたものはなんだったのか。  廣瀬さんは以前、あるパスタチェーンでM・L・LLの3サイズを同一価格で提供する業態の開発に携わっていた。客がどのサイズを何割ほど注文するのかを予測し、採算が成り立つラインを見極めるうえで、当時の知見が大いに活きたのだ。  その知見と、器に盛り付けた時の見た目のバランスも加味して、1玉の重さは150グラムにした。廣瀬さんによると、他社のうどんチェーンよりやや少なめで、冷凍うどん1玉ほどの量をイメージしたという。

 「もちろんお腹いっぱい食べてもらうことも大切ですが、自分に合った量を選べる仕組みも大事です。1玉を150グラムほどにすれば、ご年配の方でも食べやすい。2玉、3玉を注文するハードルを下げられるとも考えました」  1玉を150グラムにした狙いは、他にもある。天ぷらや丼もの、ご飯ものとの組み合わせを存分に楽しんでもらうためだ。  「今日はうどん1玉に天丼で」「今回は2玉と天ぷらにしよう」といった食べ方ができるのも、玉数を選べる仕組みならではの魅力と言える。

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